
伊賀焼陶器まつりに行って参りました。
こんにちは、祇園店スタッフの西井です。
のレン祇園店では、現在京焼アクセサリーフェアを開催しています。
陶器繋がりということで関西地区の陶器市に行かせて頂けることになり、今回三重県伊賀市で、伝統工芸、伊賀焼の陶器まつりが開催されるということで、取材に行ってきました!
イベントで知ったこと、感じたことをご紹介します。

来年で開催40周年を迎えるそうで、大きな体育館程の広さの会場に、びっしりと伊賀焼が並べられ、会場はとても賑わいを見せていました。
35からなる伊賀焼の窯元さんが、一同に会し、お客さんと対面する形式で限定商品や新作、アウトレット商品などの販売を行っています。
作家さんとの距離が近く、様々な話が聞けること、普段は高価な商品が格安の値段で購入できることが魅力で、会場では伝統工芸士によるろくろの実演や、窯元さんが実際に焼いた伊賀焼の茶器を使用したお茶席も設けられておりました。
イベント内容
伊賀焼陶器まつりは、毎年9月に開催され、今年は9月20日(金)から22日(日)までの3日間開催されました。この陶器まつりは昭和53年から行われ、来年で40周年を迎えます。
会場は、三重県伊賀市のあやまふれあい公園すぱーく阿山。会場周辺は大きな山々や田園に囲まれ、静かな里山という印象でした。豊かな自然を実際に見ると、伊賀焼が生まれ、作られている環境を肌で感じることができました。

行く道のシャトルバスの車窓からは、町の至るところに陶器まつりの看板やのぼりが見られ、町全体で陶器まつりを盛り上げています。


周辺には多くの窯元が存在していて、まさに焼物の町という印象を受けました。
このイベントは、35の伊賀焼の窯元さんが、お客さんと対面する形で商品を販売されており、作家さんとの距離が近いのが特徴です。

会場では伝統工芸士によるろくろ実演や、窯元さんが実際に制作した茶碗を使用してのお茶席も設けられ、会場は多くの人で賑わっていました。


アクセス
京都駅(JR奈良線)
↓約50分
木津(京都)駅で乗り換え(JR大和路)
↓約10分
加茂(京都)駅で乗り換え(JR関西本線)
↓約50分
新堂駅で降車
↓
新堂駅南口より専用シャトルバスに乗車し会場へ 約15分

途中からICに対応していない駅や電車になってしまうので、切符を買って行かれるのがお勧めです!


伊賀焼とは
400万年前、現在の三重県伊賀市の位置には、琵琶湖が存在していました。
その湖底に、花崗岩が風化し推積してできた亜灰等を含む豊富な量の陶土が蓄積されていきます。琵琶湖が現在の滋賀県に移動してからも、豊富な陶土は伊賀に残りました。
その周辺に豊かな赤松などの薪の燃料となる自然が豊かに広がっていたことが、伊賀焼が誕生、発展していく要因となっていったのです。

茶の湯が盛んになった桃山時代には、伊賀国領主の藤堂高虎らに好まれ、力強く豪放な花入れや茶器が焼かれました。この時代の伊賀焼は、古伊賀と言われ、ヘラ工具を使用した独特の波状や格子、ゆがみ、緑色のビードロなどといった意匠が見られます。

桃山時代が終わると、伊賀焼も衰退していきますが、18世紀中頃に藤堂藩の支援があり、現在の伊賀焼の基礎となる技術が確立していきます。
伊賀焼で使用される土は、高熱に強く、高温で焼くことが出来る為、器に降りかかった薪の灰が溶け、ビードロと呼ばれる緑色のガラス質ができます。このビードロは、窯のどの位置に器を置いて焼くか、どの種類の木を薪として使用するかによって色味が黄色っぽくなったり、青みがかったりと変化します。

陶器まつりで窯元さんにお話をお聞きしたところ、素朴で自然をそのまま感じさせる伊賀焼は、滑らかな陶器の多い海外で、珍しさから人気があり、海外のレストランへ卸している窯元もあるのだそう。
耐熱性のある伊賀焼は、土鍋や調理器具として重宝されています。



会場の雰囲気
伊賀焼と聞くと、ごつごつとしていて少し渋い印象を受けますが、最近では現代でも受け入れやすいデザインにアレンジされた物もあり、思っていた以上に若い方が来場されていました。会場に着くまでのシャトルバス内には、私を除いて5人の方が乗車されていましたが、内3人は20代くらいの女性だったのが印象的でした。
窯元さんも若い方が増えてきており、「若い方にも陶器を広めていきたい。」と仰られている窯元さんもいらっしゃり、伊賀焼を取り巻く環境が変化しているのだなと感じます。

会場内はご家族連れの方が多く、食卓で使用する食器や調理器具を話し合いながら選んでいる方が目立ちました。子ども連れの方も多かったのですが、かわいらしい動物モチーフの置物や、ろくろ実演などもあり、子どもたちもとても楽しそうな様子でした。



お茶席では、イベントスタッフさんも休憩時間を利用してお茶を飲みに来られ、お茶菓子と一緒にお抹茶を楽しまれていました。
焼き物だけでなく、伊賀組紐や伊賀の特産品を使用したフードスペースなどもあり、一日で伊賀を満喫できるイベントになっています。



印象に残った作家さん
・光月窯さん

40年以上続く窯元で、伝統を守りながら、新しい作品を生み出していらっしゃいます。
現在の窯元さんは、三代目大平誠さん。30代前半のおしゃれな男性の作家さんです。
あまり伊賀焼らしくない、なめらかで光沢のある、白黒で統一された器が特徴で、和よりも洋に合うようにデザインし、普段使いしてもらいやすい形を目指しているそう。
若い方に人気なのは、花を象ったような、縁がなめらかな曲線を描いている平皿。おしゃれ女子が、ケーキを乗せる用にと購入されるとのこと。ヨーロッパの器にインスパイアされ、マーブル模様の鮮やかな皿も制作されています。
伊賀の土のみを使用することに拘っていると仰っていました。

・宮本 晋さん
60代くらいの男性
力強い伊賀焼らしい花入れや壺、その横に、真っ白な中に美しい模様の浮き出た繊細な平皿と、全く作風の異なる作品が並んでいました。

ごつごつとした伊賀焼らしい作品は、実際にご自分で山から土を採取し、制作されているそうです。
白い皿には、盛り上がった模様を描くことの出来る、イッチンという技術が用いられており、ふっくらとした見た目を利用して、お米をテーマにした皿を制作されたと仰っています。

女性には大き目の鉢が人気で、男性はマグカップを購入される方が多いとのこと。
伊賀焼陶芸まつりの実行委員もされています。
・野津 由加さん
30代後半の女性
茶、水色、紺、白の落ち着きのある色味が特徴。
表面は伊賀焼ならではの少し凹凸がある作風。釉薬はご自分で調合し制作されているそうです。
今回のイベントで、一番女性で賑わっており、観察していると、一番手に取っている回数が多かったのは、花や葉っぱを象った箸置きでした。

ですが野津さんのお話では、一番人気は水色の釉薬を使用したお皿とのこと。
実用的で目に楽しい器を心がけて制作されていらっしゃるそうです。

感想
私は三重県出身で、伊賀焼の陶器市には何度も行った事はありましたが、恥ずかしながら、伊賀焼についての知識が全くありませんでした。
今回じっくり、しつこいくらいに窯元さんに質問し、教えて頂くことで、ようやく伊賀焼について少し学べたように思います。
今回陶器まつりに参加して驚いたことは、窯元さんも、来場されている方にも、思っていた以上に若い方がいらっしゃったことです。
窯元さんの、若い方に、もっと陶器に興味を持って欲しい、という思いが、広まりつつあるのかなと感じました。私自身が、お客様により良い物を提案し、また今回情報を発信するというお仕事に携わることが出来るようになったので、窯元さんの思いを、さらに多くの方に広める手助けが出来ればと思います。
近年では、海外でも伊賀焼の魅力が伝わり始めているそうで、今後の伊賀焼の発展が楽しみになった取材となりました。
これからも各地の焼物を取材し、日本の良い物を発信、提案できればと思います。