
『霜降』次候、時雨時施す(しぐれときどきほどこす)
皆さま、こんにちは。のレンリテール部の岩崎です。
日も随分と短くなり、また日ごとに寒さが増し、冬の足音がそこまで聞こえ始めました。
七十二候は、霜降次候の「時雨時施す」となりました。七十二候では秋もそろそろ終盤戦です。
意味としては、「時雨が降るようになる頃。秋の末から冬のはじめにかけて現れる、サッと降っては晴れる、通り雨の小気味良さ」を示しています。
実は、「初時雨(はつしぐれ)」はこの時期の季語でもあります。
お手紙を書かれる方はよくご存知かと思いますが、書き出しの言葉として頻繁に使われます。
降っては止んで、あちらの山からこちらの山へと時雨が移りゆく様は、「山めぐり」とも謂われ、芭蕉に代表される古き良き歌人も歌に詠み、古くからわびしさや悲しみを暗示する景色として、和歌などに詠まれています。
「時雨心地」ということばでもあるように、涙をすっと流すような、そんな気持ちまで意味しています。
余談ですが、私自身、昔から出かけると「よく雨が降るなぁ。」と自覚があり、雨女という事を蔑んでおりました。
ただこの時期は、しとしと降っていた冷たい雨が突然止み、さっと広がっていく青空や、雨粒に濡れた草木や路面が太陽に照らされてキラキラと輝く様を見ることができるので、気持ちが明るく前向きになれます。

さて、先程晩秋の季語の話を少し書きましたので、もう一つこの時期にぴったりの季語を紹介します。
秋の夜長の表現と合わせて使う「灯火親しむ」という季語があります。
「灯火(とうか)」とは明かりのこと。
「灯火親しむ」とは明かりのもとで読書したり、自分の好きな音楽を温かい飲み物を飲みながら聞いたり、家族でお鍋を囲んで団らんして過ごしたり…という季節のことを示しています。
お鍋は本当にこの時期、ご家族で楽しむにはもってこい!の夕食メニューになりますよね。

ちょうど本日10月28日は、「お出汁の日」でもあるそうです。
お出汁素材の代表格であるカツオ節が、江戸時代に考案されたことから記念日になったとのこと。
お鍋でもお出汁は重要なベースですが、カツオ節・昆布・煮干し・干しシイタケ・焼きアゴなどを煮出してできるお出汁は、和食の基本ですね。乾燥した材料から引き出される凝縮した旨味と栄養のおかげで、たくさんのお料理が生まれました。
お味噌汁を飲んだ時など、このお出汁の旨味とお味噌の香りと味で、しみじみと「あ〜美味しい。」と思いますし、疲れた心身も癒してくれますね。
なんとなく寒くなると物悲しくなる時期ではありますが、時雨のもたらす景色の移ろいや、寒くなったからこそ心身に染みる灯りやお鍋やお出汁などから、私たちは知らず知らずのうちに、生きるエネルギーをいただいているのかも知れませんね。
