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二十四節気・季節

『小満』次候、紅花栄(べにばなさかう)

こんにちは、のレンの妻木です。

みなさん、ようやく全国で緊急事態宣言が解除されましたね。
長かった自粛生活から少しずつ日常が戻り、また新たな生活が始まります!                                    

今日から七十二候は、小満次候「紅花栄(べにばなさかう)」に変わりました。
紅花が一面に咲く頃をいいます。

紅花の開花は5〜7月。染料として花びらだけを摘んでいた為、別名「末摘花(すえつむはな)」と呼ばれています。                                   

黄色と赤が入り交じった「紅花」の花は、そのままの黄色と赤の色素を含みます。
葉の刺が鋭いため、紅花染の材料となる花の採取は早朝、露を含んで葉がまだ柔らかいうちに、花びらだけをひとつひとつ丁寧に摘み取っていきます。  

花を発酵して乾燥させて作る染料「紅餅」は大変手間ひまがかかることから、幕末当時は、お米よりも価値があり、金の十倍といわれる贅沢品でした。
ですから、濃い紅染は限られた高貴な人しか着用が許されない「禁色(きんじき)」となりました。

同様に紅餅から作られる口紅も高価なものだったので、紅はごく一部の裕福な人々しか使用できず、花摘みをする農家の娘たちとは無縁のものだったそうです。
花摘みをする農家の娘さんたちは、普段はつけることができない紅を見ながら、何を思っていたのでしょうか…。

紅餅作り


紅花の原産はエジプトと言われており、日本にはシルクロードを通って、5〜6世紀頃に伝わり、近畿地方を中心に全国に広まっていきました。

江戸時代中期には、山形県最上地方で栽培される「最上紅花」は、徳島県で生産される阿波の藍玉と並んで、「江戸時代の二大染料」として知られるようになりました。
最上地方は今でも紅花の日本最大の産地として知られ、紅花は山形県の県花にもなっています。7月には「紅花まつり」も行われ、黄色や橙色の紅花が一面に咲いて、彩りある景色が楽しめます。


染料として親しまれた紅花。開花当初は「黄色」で、そして日が経つにつれ「紅色」へと変わっていく花びらは、深まりゆく恋心にも例えられ、「万葉集」や「古今和歌集」などに、多くの和歌が残っています。                                              

「紅の薄染衣 浅らかに相見し 人に恋ふる頃かも」

『源氏物語』の第六帖のタイトル「末摘花」でも有名な、物語に出てくる鼻の先が赤い女性に対して、花が紅いことをかけて光源氏がつけた名ですが、不美人ながら、実直な性格、純真で一途な心根を持ち、光源氏と生涯関わり続けた女性の一人となりました。    


紅花は、昔から染料や口紅・頬紅としてだけでなく、生薬・ハーブとしても使われていました。

血行を良くしたり、ホルモンバランスを整えたりする効果があり、「紅花(こうか)」とよばれる漢方薬にもなっています。
体を温めてくれるので、冷え性の女性が好んで、紅茶として飲まれているそうです。

養命酒にも生薬として含まれていたり、種を絞って採れる紅花油(サフラワーオイル)は食用油やマーガリンにも使われていたりと、いろいろな食品に用いられています。
言われてみれば、紅花のイラストが書かれたパッケージの食品をよく見かけますね。    


紅花の柔らかな色調は、古来から日本人の心を捉えてきました。

人々の衣を彩り豊かに染め、女性の口や頬を華やかにし、生薬として体を温めて、誰もが持っている内に秘める美を、自然と表現してくれる魔法の「紅花」。

昔も今も、女性の「美」への憧れの気持ちを呼び起こしてくれる素敵な花です。




5月の京都、渡月橋


                                                

当店のレンは、暖簾(のれん)を潜ってもらい、お客様にまだ知られていない日本の奥深い暮らしの考え方や工夫、魅力を伝えたいという想いで誕生しました。

永く愛されるもの、古きを温めて現代の生活を取り入れたくなるもの、自然素材のもの、生産者さま・作り手さまの温もりが感じられるもの、などを品揃えして、節目ごとにふと立ち寄りたくなるようなお店を目指し、丁寧により豊かに過ごすことができるようにと皆様をお待ちしております。